投資の話の中で、アービトラージとか裁定取引などの言葉を
よく聞くと思います。
アービトラージ、裁定取引がどのようなものか、
何が問題か、などを解説します。
<目次>
①アービトラージとは
②アービトラージの種類
③アービトラージのメリット
④アービトラージのデメリット
⑤まとめ
①アービトラージとは
アービトラージ(Arbitrage)とは、
2つの市場の同一の商品の価格差を利用して、
利益を得ようとする取引のことを言います。
裁定取引やサヤ取りとも言われます。
身近な例を上げて見ます。
例えば空港の両替所で円とドルを両替する場面を想像して下さい。
ある両替所Aでは、
日本円をドルに両替(ドルを円で購入)する場合、1ドル100円、
ドルを日本円に両替(ドルを円で売却)する場合、1ドル98円
だったとします。
また、別の両替所Bでは
日本円をドルに両替する場合、1ドル105円、
ドルを日本円に両替する場合、1ドル103円
だとします。
まず、両替所Aで、1ドルを100円で両替(購入)します
そしてそのドルを、両替所Bに行って、1ドル103円で両替(売却)します。
そうすると、最初の元手100円が103円になりますよね。
両替しただけなのに、3円の利益になりました。
このように同一の商品(ここではドル)の
売値と買値の価格差が利益になる市場(ここでは両替所)で、
行う取引をアービトラージ取引と言います。
実際の投資の取引対象は、株式やFX、商品(コモディティ)、
オプション、金融派生商品など、
ほぼすべての金融商品が対象となることができます。
②アービトラージの種類
1)ブックメーカーアービトラージ
ブックメーカーというのは、
欧米における公認の賭け屋のことです。
ブックメーカーの賭けの対象は、
競馬から始まり、プロスポーツや政治的選択もあります。
なお、日本では、ブックメーカーは法律違反ですので
存在しませんので、あくまで欧米で公認されている場合の話です。
例えば、サッカーの試合で、
ブラジル対ドイツの試合があるとします。
その試合の勝ち負けを、ブラジルとドイツ
それぞれの国内で賭けの対象にするとします。
当然、ブラジル国内とドイツ国内では
倍率が大きく異なってきそうですよね。
ブラジル国内では、ブラジルの倍率(オッズ)が1.2、
ドイツの倍率(オッズ)が2.2とします。
ドイツ国内では、ドイツの倍率(オッズ)が1.2、
ブラジルの倍率(オッズ)が2.2とします。
ちなみにここで言う倍率(オッズ)というのは、
掛け金が何倍になって戻ってくるかという数字です。
数字が小さい方が、人気がある、
つまり勝つと思って賭けている人が多い、
ということを示しています。
ブラジル国内ではブラジルが勝つと思って、
ブラジルの勝ちに賭ける人が多いので、
倍率(オッズ)が小さいということです。
(実際もし実現したら、こんな倍率ではないと思いますが)
ここで、2万円をかけることにします。
賭けの対象は、ブラジル国内では、
ドイツ勝利つまり倍率(オッズ)2.2に1万円賭けます。
ドイツ国内では、ブラジル勝利、
倍率(オッズ)2.2に1万円賭けます。
そうすると、
ドイツが勝った場合、ブラジル国内では
1万円x2.2=2万2千円勝ちました。
ドイツ国内では、賭けに負けたので
お金は戻ってきません。
トータルでは、
2万2千円(ブラジルで賭けに勝ったお金)-2万円(両国での掛け金)=2千円
の利益です。
ブラジルが勝った場合は、その反対で、
ドイツで2万2千円勝ち、ブラジルで負けたので、
2万2千円(ドイツで賭けに勝ったお金)-2万円(両国での掛け金)=2千円
の利益です。
つまりどちらが勝っても負けても、
2千円の利益になるという仕組みです。
2)株式アービトラージ
株式アービトラージの具体的な方法は
1)値動きがほとんど同じ株を2つ選ぶ
2)2つの株価の差が大きくなるのを待つ
3)安い方の株を買って、高い方の株を売る
(株を持っていなくても空売りできます)
4)2つの株価が同じくらいになってきたら決済して利益を確定
という流れになります。
例えば、ほぼ同じように連動しているA社、B社があります。
たまたま、A社の株価が1,000円でB社の株価が1,020円といったように
株価に開きが出た時点で、アービトラージを行います。
具体的には、割安なA社株を1,000円で信用取引で買建て、
割高なB社株を1,020円で売建てることにより、
アービトラージ利益を得ることができます。
裁定取引の鉄則は「割安なものを買い、割高なものを売る」です。
しばらくして、両社の株価が1,010円になったとします。
A社株の反対売買+B社株の反対売買
=(1,010円-1,000円)+(1,020円-1,010円)=20円
これがアービトラージの利益になります。
3)FXアービトラージ
FXのアービトラージには方法が2つあります。
1)為替を利用したアービトラージ
まずは、為替を利用したアービトラージがあります。
為替のレートは、FX業者によって異なることを利用するやり方です。
例えば、米ドル/円でロング(買うこと)の為替レートに
「ずれ」が生じることがあります。
海外FX業者Aでは1ドル=110円
海外FX業者Bでは1ドル=110円5銭
などのような「ずれ」です。
このような場合に、
レートが高いFX業者Bで1ドル=110円5銭で売って、
レートが安いFX業者Aで1ドル=110円で買うことで、
5銭の利益が得られます。
このようにFX業者間で為替レートに差が出ている場合に
アービトラージで利益を得ることができます。
2)スワップポイントを利用したアービトラージ
スワップポイントについても為替レートと同様に
FX業者によって差が生じることがあります。
FX業者のスワップポイントの差額を利用して、
利益を得るものです。
なお、スワップポイント(金利差調整分)というのは、
2カ国間の金利差によって発生する利益のことです。
例えば
FX業者Aでは、南アフリカランドを買うと、
1日あたり150円のスワップポイントがもらえるとします。
FX業者Bでは、南アフリカランドを売ると、
1日あたり120円のスワップポイントを支払うとします。
こうすれば、為替がどのように動いたとしても、
買いと売りの両建てを行っているので、
為替変動に影響を受けることなく、
差額のスワップポイントを毎日30円ずつ得られるのです。
4)暗号資産(仮想通貨)アービトラージ
方法は単純で、暗号資産(仮想通貨)を価格の安い取引所で購入し、
高い取引所で売るだけで利益を得られます。
例えば、取引所Aと取引所Bにおける
ビットコイン(BTC)の取引価格が
ビットコイン(BTC)の取引価格が
下記のように異なるとします。
取引所A:
購入価格:100万円
売却価格:99万円
取引所B:
購入価格:102万円
売却価格:101万円
この時、
取引所Aで1BTCを100万円で購入し、
取引所Bで1BTCを101万円で売却する。
この価格差を利用した取引を行うことで、
1万円の利益を得ることができます。
これが、暗号資産のアービトラージの仕組みです。
③アービトラージのメリット
1)理論上100%利益が得られる
アービトラージは利益が確認出来てからできる投資なので、
理論上、100%利益が得られます。
後出しじゃんけんのようなものです。
2)いつでもできる
2つの市場の価格差は常にどこかにあるので、
いつでも取引ができます。
金融商品で利益を得るためには、
通常は安い時に買って、値上がりを待って、
売却利益を狙いますが、
アービトラージでは、
購入後値上がりを待つ必要がありません。
3)金融商品の下落を回避できる
金融商品の価格差から利益を得る仕組みなので、
金融商品が下落したとしても影響を受けません。
株価が暴落しても、円安円高が進んだとしても、
そのことによる損失リスクが低くなります。
④アービトラージのデメリット
1)差益が取れるものが見つからない
現実には、差益が取れるものが見つかる可能性が低いです。
オッズや価格差は秒刻み分刻みで変化するので
見つけるのは難しいです。
つまりアービトラージ法を使える組み合わせとタイミングは
そうそう見つからないということです。
2)直ぐにやらないといけない
オッズや価格差は秒刻み分刻みで変化するので
見つかった時点ですぐにやらないと、
利益を得ることは難しいです。
3)価格変動のリスク
直ぐにやっても価格差が変動するので、
利益が減ることがあります。
アービトラージは価格差を確認してから投資するので、
理論上、100%利益が得られますが、
市場の価格変動が早いので直ぐに対応をしても、
逆転する可能性もあります。
場合によっては、赤字になるリスクがあります。
4)利益率が低い
市場の価格差を利用するのですが、
現実として、それほど価格差が開くわけではありません。
一例として、ビットコインの2020年11月の価格見てみます。
取引所Aで1BTCを143万9,120円で購入し、
取引所Bで1BTCを144万0,108円で売却すると、
その差額が1,219円、利益率は、0.1%以下です。
変動が大きい場合でも、数千円の価格差です。
機関投資家のように大量に資金があれば、
ローリターンでも利益を得られます。
しかし、個人の余裕資金程度では、
手間と時間をかけたとしても
それに見合うリターンを得ることができません。
5)多くの市場を監視する必要がある
価格差はいつも同じ市場で発生するものではありません。
したがって、複数の市場の価格差を見続けなくてはなりません。
できるだけ多くの市場を監視する必要があります。
また、価格差が生じてチャンスがきたとしても、
一瞬で終わってしまうケースも少なくありません。
それを逃がさないためにも、常にアービトラージ取引の
チャンスを見守る必要があります。
6)ブックメーカーは国内では違法
ブックメーカーは国内では禁止されています。
したがって、ブックメーカーアービトラージを
国内でやることは違法ですす。
ブックメーカーが海外の場合は、
グレーゾーンと言われています。
海外のサイトであっても、状況によっては、
違法とみなされる可能性があります。
7)海外口座のリスク
ブックメーカー、FX、暗号資産取引所など
口座を海外に作る場合はリスクがあります。
海外口座のリスクについてはこちらの記事をご覧ください。
↓
⑤まとめ
・アービトラージとは、市場の価格差で利益を得る手法のこと
・利益が分かってから投資するので、理論上は利益が100%得られる
・現実には、差益が取れるものがなかなか見つからない
・利益率が低いので、多くの資金が必要
・多くの市場を監視する必要がある
・価格変動が早いので赤字になるリスクがある
・アービトラージは資金が豊富な機関投資家向き
・個人が副業でやるには、リスクが大きく向かない